2020年夏号

腫瘍内科医としてがん教育にかかわること

本号につきましては、あとがきではなくコラムとなってしまうことご容赦ください。私は腫瘍内科医(がんを専門に診療を行う内科医)として現在がんの疫学研究に従事しています。

一般の方にとっては「腫瘍内科」「疫学」という言葉は従来あまり馴染みがないかもしれません。しかし近年になり腫瘍内科医は徐々に多くの人に知られるようになりつつあるのではないかと希望的観測をしております。検索サイトでも「腫瘍内科医とは?」などと検索していただくと多くのサイトが表示されます。腫瘍内科医はがん薬物療法専門医の標榜の通り抗がん剤の専門家であり、うまく有害事象をコントロールしながら最大限の効果が得られるように治療を行います。しかしそれだけではなく、がん治療の柱となる抗がん剤および手術・放射線治療・緩和医療を組み合わせた治療の船頭役として重要な役割を担うことが求められます。

最大限の効果と述べましたがこの効果とは一体何でしょうか?ONCANCERの創刊号に掲載されている「医師が『がん』教育を語る」のなかで岡山大学病院血液・腫瘍内科の西森先生と神奈川県立がんセンター臨床研究所の片山先生との鼎談会でも言及させていただきましたが、がんは根治を目指せるがんと、根治を目指すことが難しいがんとに大別することができると個人的に思っています。このことは意外に知られていないと感じています。この大前提としてその方が罹ったがんがどちらであったかで、効果の捉え方も変わってくるのではないかと思います。

いずれにしても、その方が「これでいい」と思える日々を送れること、言い換えるとその方の「生活の質(qualityoflife)」を中心に考えることが最善だと感じています。WHO(2002年)による緩和ケアの定義によりますと「緩和ケアとは、生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のQOLを、痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し、的確に評価を行い対応することで、苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチである。」とされています。QOLの向上を最優先課題として考えるがん治療において、早期からの緩和ケアが推奨されるのも当然と言えます。

腫瘍内科医としては船頭役を担い、疾患としてがんと向きあうだけではなく、がん患者さんに寄り添い、その方の「生活の質」がなるべく高くなるように、ともにがんと向き合っていくという診療を心がけていました。

今は疫学研究のフィールドに身を置き、特に予防をキーワードに活動をしております。予防には、一次予防から三次予防までありますが
(説明は割愛させていただきますが、「健康日本(総論)、第3章基本戦略、第2節対象集団への働きかけ」などご参照ください。URL:https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/s0.html)、
腫瘍内科医としての経験を原動力にがん予防の研究をしています。がんに関わる、多くの人の「生活の質」を向上させたいと思ったときに、一次予防から三次予防までカバーしていて、幅広い年齢層が対象となりうるがん教育は肝心要です。今後、がん教育により積極的に携わっていきたいのはもちろん、情熱を持っている多くの先生のそれを、必要としている人に届けられるような活動を、皆様とともに進めていけたらと思っています。

中村 翔

神奈川県立がんセンター臨床研究所がんサバイバーシップ・教育ユニット客員研究員

茨城県つくば市出身、山形大学大学院医学系研究科博士課程修了。
博士(医学)現在、神奈川県立福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科講師として勤務する傍ら同県立がんセンター臨床研究所がんサバイバーシップ・教育ユニットの客員研究員としてがん教育にも従事している。
専門:臨床医学・がん疫学

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